セラミックで歯をきれいに治したのに短期間で壊れてしまったという経験はありませんか? セラミックが壊れてしまう原因はいくつかあります。セラミックの強度が原因であることもありますが、大きな原因の一つはセラミックそのものに起因していません。
図1はセラミックのかぶせ物が壊れてしまった典型的な例です。 セラミックはガラスに似ていて、硬いけれどもたわませると割れやすい性質をもっています。歯は咬むたびに強い力がかかりますが、このときセラミックと歯との接着に軟らかくて弾力のある 接着材を使用すると、咬む力でセラミックがたわんで割れてしまいます(図2a)。一方、接着材に硬くて接着力の高い材料を使用すると、咬む力がかかってもセラミックがたわむことがないの で、割れることがありません(図2b)。
もちろんセラミックの強度が原因で壊れることもありますが、近年ではジルコニアなどの高強度のセラミック素材が多く使われるようになったため、壊れる心配はほとんどなくなりました。当 院では、研究結果に基づき硬くて接着耐久性の高い材料を使用し、より強度を高めることでセラミックの破損や虫歯の再発を予防しているので、10年の保証をお付けしています。自費治療とな りますので安くはありませんが、耐久性が高く見た目もよいセラミック治療を安心して受けていただけると思います。
保険の銀歯のほうが安くて壊れにくいとお考えになる方が中にはいらっしゃいます。しかし耐久性の低い接着材を使用していることがあるため、銀歯は壊れなくても接着材と歯との間に隙間が 生じ、その隙間に入り込んだ虫歯菌が酸を放出して歯を溶かし、見えない歯の内部で虫歯が再発することがあります(図3)。虫歯が再発すると壊れていない詰め物を壊して新しい詰め物を作 り直さなくてはなりません。かぶせ物や詰め物の耐久性も大事ですが、歯との接着耐久性によっていかに虫歯から歯を守っていくかのほうが大事です。歯は虫歯の再発を繰り返すたびに虫歯の 部分を削ることで歯質がなくなっていき、最終的には歯を喪失することになります。歯を喪失してからその大切さが分かっても手遅れです。定期健診を受け、虫歯があればできるだけ歯が長く 持つ方法を選択していきましょう。
図1 セラミックのかぶせ物がこわれてしまった典型例.弾力のある接着材が使用されている
図2 軟らかい接着材を使用すると(a)、セラミックがたわみ割れてしまう.
一方、硬い接着材 を使用すると(b)、セラミックがたわまないので壊れない
図3 虫歯の再発.接着材が劣化して隙間が生じると、隙間に虫歯菌が侵入して歯を溶かし、虫 歯が再発する