お口の中の病気は、時としてお口以外の別の臓器に障害を引き起こしてしまうことがあります。『病巣感染』という言葉がありますが、これは感染した所から離れた別の部位に二次的に病気が引き起こされることをいいます。
特にこの病巣感染の原発巣が歯の場合を歯性病巣感染といいます。
歯性病巣感染の原因は
- ・口腔内細菌が血流を介して他の臓器に運ばれて感染する。
- ・細菌や細菌の代謝産物に対する抗体によるアレルギー反応
といわれています。
お口の中には約300種類の細菌が数千億個存在するといわれています。中でも歯周病菌は、歯と歯肉の境目にある歯周ポケットの中に存在し、歯周組織(歯肉、歯槽骨)を破壊する歯周病(図1)を発症させます。歯周病は病巣感染により様々な臓器に影響を及ぼします。 以下に歯周病に関係する主な病気を示しますが、これらの病気が発症するリスクが低減されるよう、お口の中の細菌を減らすためのプラークコントロールが必要です。これには日常の歯磨きはもちろんのこと、定期的な歯科でのメンテナンスが必要です。
脳梗塞 | 重度の歯周病がある人は歯周病がない人に比べて脳梗塞を発症する危険性が高くなります。 |
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肺炎 | 寝たきりの高齢者など体力が減弱している人は、歯周病菌が肺に侵入して肺炎を引き起こす可能性が高くなります。 |
細菌性心内膜炎 | 歯垢中の細菌は他の組織に対して付着能力が強いものがあるため心内膜炎を引き起こしやすくなります。 |
狭心症、心筋梗塞 | 重度の歯周病がある人ほど動脈硬化による心臓疾患が多くなることが分かっています。 |
低体重児出産 | 重度の歯周病があるお母さんは、お口が健康なお母さんに比べて低体重児出産の可能性が高くなります。 |
糖尿病 | 糖尿病の人は歯周病にかかりやすいですが、逆に歯周病が糖尿病を悪化させることも分かっています。 |
その他腎疾患、リウマチ性疾患、皮膚疾患なども歯性病巣感染が原因で引き起こされることがあります。
図1
歯周病の口腔内の一例