酸蝕症とは、口の外から入ってくる酸、あるいは胃酸によって歯が溶かされる現象をいいます。虫歯も酸によって歯が溶ける病気ですが、口腔内の虫歯菌が産出する酸が原因なので酸蝕症とは区別しています。
歯は酸によって表面が一時的に溶かされても(脱灰)、唾液に含まれるミネラル(リン酸イオン、カルシウムイオン)によって歯を修復(再石灰化)しますが、酸蝕症は歯の再石灰化が酸による脱灰に追い付かない場合に発生します。
主な原因は、
①習慣的な胃酸の逆流
摂食障害による嘔吐や逆流性食道炎など
②酸性食品の過剰摂取
レモン、オレンジなどの柑橘系果物
清涼飲料水、ワインや酢などの酸性飲料
③職業的原因
メッキ工場など酸を取り扱う職場では揮発した酸によって歯が溶ける場合があります。
酸蝕症の予防方法は、
・病気による胃酸の逆流の場合は、その病気を治す。
・酸性食品の過剰摂取を控える
・酸による歯の脱灰を予防するため、フッ素による歯質の強化、リン酸カルシウムなどの再石灰化成分が含まれているリカルデントガムやポスカムなどで再石灰化を促進する(2022年7月コラム参照)。
図1は逆流性食道炎の方の口腔内で、歯が強くしみるとのことで来院されました。見ると表面にあったエナメル質が大きく溶けてなくなり、知覚のある内部の象牙質が大きく露出しています。
ここまで大きく歯が溶けてしまった場合は、セラミッククラウンやコンポジットレジンなどの充填材で象牙質をカバーしなければ症状を改善させるのは難しいと考えられます。
図1 逆流性食道炎による酸蝕症.