虫歯が大きくなると歯がしみたり痛くなったりすることがよくあります。これは虫歯菌が歯の内部にある歯の神経(以下、歯髄)に感染し、炎症を引き起こすからです。
従来は、症状が出るほどの大きな虫歯は歯髄を除去する方法が主流でしたが、虫歯菌を殺菌する抗菌薬を使用して感染した歯質を無菌化することで、比較的多くの場合で歯髄の保存が可能になりました。
ここで重要なのは、歯髄を健康な状態に回復させて修復治療した歯が、その後も長期にわたって虫歯が再発することなく機能することです。
治療した歯に虫歯が再発することがしばしば見受けられますが、原因の多くは歯と修復物との接合部に隙間が生じて虫歯菌が再び内部に侵入してしまうからです。これには繰り返し歯にかかる咬み合わせの力が大きく関与しています(2009年5月コラム)。
山手通り歯科では、歯髄付近まで進行している深い虫歯に対しては、症状のあるなしに関わらず、歯髄への細菌感染を防ぐために歯髄付近に存在する細菌を殺菌してから、歯の修復処置へ移行するようにしています。
具体的な治療方法としては図1 a~gに示すように、まず虫歯部分を歯髄が露出しない程度に除去し抗菌薬で歯髄付近の虫歯を無菌化した後、別日に再度最深部の虫歯(軟化歯質)をできるかぎり除去して健全歯質を露出させます。この場合歯髄が露出することがありますが、抗菌薬によって無菌的な状態の歯髄は出血が無いか出血があっても止血が容易で、そこに歯質との接着性が高く歯髄に直接触れても炎症が起きない接着性レジンで歯髄を保護してから修復します。当院ではこのような修復治療にセラミックを使用することが多く、10年の品質保証をしているのは、今までの研究結果や臨床の裏付けがあるからです。
図1 a~g
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図1 山手通り歯科で行っている深い虫歯の治療方法
a. 虫歯が大きく、冷たいものがしみるとのことで来院
b. 麻酔下にて歯髄を露出させない程度に虫歯を除去し、抗菌薬を塗布
c. セメントにて封鎖し、細菌による歯髄の炎症を抑える
d. 後日症状消失後、再度麻酔下にて深部の軟化歯質を除去.一部歯髄が露出
e. 露出した歯髄を生体親和性の高い接着性レジンで封鎖し歯髄を保護
f. 形態修正、歯型を採得しセラミックを作製し修復
g. 約20年後.問題なく経過している(当院担当技工士の口腔内)